ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「とまあ私からはこんな所で、後は大沢君に任せるとしましょう。まあ無理せずに、データの整理ぐらいからボチボチ教わるといい、ミライ君」

と優しい眼差しをミライに向ける教授。

「はい」

素直に頷いて返すミライ。聞いた傍から覚えてくれそうな感じは、教える方としては頼もしい限りだ。

「じゃあ後は頼むよ大沢君」

と教授が軽く手を上げながら部屋から出て、スーッと閉まる扉の向こうへと消えていった。

(僕が説明するまでも無いな)

一通り教授が話をしてしまった。

「いやぁ~、よく揃ってるね。想像以上だよ」

と所長が測定機器の載ったワゴンのひとつへ歩み寄って、上に置いてあったヘッドセットを興味深げに手に取って眺めた。

「ふ~ん、光トポグラフィーの実物、初めて見たよ。これで脳波の分布具合を測定できるんだよね?他にも測定機器が色々あるし、相当なデータ量が集まるんじゃないかな?」

「ええまあ、そうですね」

それを解析するのが僕の研究課題という訳です。

「へえ~」

と所長が、僕の目の前のワゴンに向かって歩いて来た。

「納得したよ。これだけあればあの論文が出来上がるのも頷けるね」

と含み笑いを見せながらワゴンの取っ手に両手を突く所長。

「論文は読めるだけ読ませてもらったよ。すごいもんだね。行動の動機付けに関する心の状態を、統計的に分析出来るっていうのは」

と身を乗り出すように話し掛けてくる所長。

「いやそんな大した事じゃ…」

謙遜して答えると、所長が顔をグッと突き出してきた。
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