ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 駅前に建つファッションビルの中を、ミライを連れて当てもなくぶらぶらと歩き回った。どのフロアーも若者の人込みで溢れている。

「タカシ」

と、急にミライが足を止めて声を掛けてきた。立ち止まって振り向くと、ミライがスッと腕を組んでくるじゃないか!

「えっ!」

な、何だい急に?

「ほら、こうしてる、二人で歩いてる人」

とミライが見つめる先を見ると、前を行く二人が腕を組んでイチャついていた。

「こうしてると、とってもうれしそう」

確かにイチャつく二人はとても嬉しそうにしてる。

(だから、こうすれば僕も嬉しい顔になる、そしてミライも笑顔になれる、ってわけか)

ミライの中ではそれが一番いい事なんだな。

「タカシもうれしい?」

と寄り添って腕をギュッと掴んでくるミライ。

「あ、ああまあね」

頷きながらちょっと照れた。

(ロボットと腕を組んでるんだもんな)

さすがに気恥ずかしいよ。

「うれしそう、タカシも」

とグッと素敵に笑みをこぼすミライ。そんな笑顔を見るのも、まあ悪い気はしない。

「…じゃあ、行こうか」

「うん」

ロボットだとわかっていても、腕から伝わってくるミライの温もりが何となく嬉しい。きっと周りからはフツーのイチャつく二人に見えてるんだろうな。

「ちょっと歩きづらい」

「ハハハ」

ひとりだけどふたりで歩いている。そんな妙な時間をじんわりと楽しんで過ごした。
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