探偵喫茶へようこそ
「あたしは一瞬、自分の本当の名前は知由梨だったのかと思った。あたしの名前は紙切れに書かれていたらしいから、そこだけ破れたのかと。だが、三崎夢里は知らないと言った」
「あれはその確認だったのか」
海は思いつき、納得した。
「そのことに関しては、嘘をつく必要がないであろう?」
「だな」
やっぱり天才だ。
この会話をしていく中で、海はそう感じた。
何もかも見抜いていたわけじゃない。
そうではないか? と、自ら仮定を立てているだけ。
その仮定が、事実であることが多い。
それが偶然だとすればそれだけの話。
だが、その仮定にあった証拠や根拠を自ら見つけ、相手を納得させることまでさせるのだから、天才としか言いようがない。
「まあ戸籍を調べれば一発なのだが」
こういうところさえなかったら、知由本人にそう言っただろう。
「……お前、知っててあの質問したな?」
「確認だ。正直、もし本当に知由梨だったとしたら、あたしは泣いた」
それを真剣に言うのだから、おかしくてしょうがない。
「なんでだよ」
「三崎知由梨など、変な名前はお断りだ」
頭の中で「三崎知由梨」と言ってみる。