魔王と王女の物語 【短編集】
「ど、どした?チビ、こっち向いて…」


部屋に戻るなりバルコニーに出て海の遥か向こうにある水平線をじっと見ているラスに思い切り動揺…いや、プチパニックに陥ったコハクは、ラスの周りをちょろちょろして顔を見ようとするが、その都度ぷいっと顔を逸らされてその表情をうかがい知ることができずにいた。


「チビ…俺…なんかした?」


「…分かんないならいいの」


「や、分かんねえから教えてほしいんだけど…」


「コーって女たらしだけど鈍感なんだね」


「へっ!?お、女たらしっていうのはそのー…過去…だろ?過去は不問にしてください…」


どこまでも低姿勢。


――コハクに愛されている自信はもちろん、ある。

あるが、コハクに言い寄る女は多いし、本人は今までそれを意に介していなかったが、珍しくエマを褒めたことでラスとしてはやきもちを妬いていたのだが――コハクはそれに気付いた様子は全くない。

小さくため息をついたラスはコハクに向き直り、しょんぼりした顔をしているその頬を軽くつねった。


「ちょっとやきもち妬いただけだもん」


「…えーーーーー!?ま、マジで!?」


…大喜び。

どこまでも大喜びして顔を輝かせる魔王にまたぷいっと顔を背けたラスがぽつり。


「ディノも素敵だよね。優しそうだし、とっても紳士だし」


「お、俺も紳士だし優しそうだろ!?」


…必死。

思わず吹き出したラスは、起こる気力も失せて笑った。


「冗談だよ。コーが一番好き」


魔王のテンション、急上昇。
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