魔王と王女の物語 【短編集】
食事もそこそこに部屋に戻ったディノは相変わらずエマがなぜ落ち込んでいるのかが分からず、ソファに座って本を読んでいたアマンダの隣に座った。


「本読めるの?」


首を振ったアマンダの肩に腕を回してそっと引き寄せてみるとその肩はとてもか細く、足に目をやると、驚くほど細くて歩くと折れそうだと思った。


「国王陛下たちが君を歩けるようにしてくれたの?」


――性格にはコハクだが、アマンダが頷くとディノは絵本の中だけでしか見たことがなかった人魚が海岸に現れてこの美女を救ったことが自分の人生において一番評価すべきことだと自負して、熱心に見つめてくるアマンダの顎に手を添える。


「…いい?」


こくんと頷いたアマンダのやわらかい唇に唇を重ねると、思った以上にそれはとてもディノの全てを刺激して深くキスをした。


アマンダ自身はそれははじめてのキスで、恋した男に求められて力が抜けて背もたれにずるずるもたれかかると、追い打ちをかけるようにディノに押し倒されて顔が赤くなった。


…だがこの流れでディノに求められて抱かれれば――ディノは自分のものになる。

この足も自分のもの。

そして声も戻ってくるのだ。


野望に目が輝いたアマンダがディノの背中に手を回そうとした時、何者かにドアをノックされてディノが身体を起こして我に返ってしまった。


「ご、ごめん」


「…」


内心舌打ちしてしまったが、ディノの心は自分に向いている――時間をかければきっと全ては自分のものになる。


全て全て、手に入れてやる。
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