悪魔の囁きは溺愛の始まり
蒼大さんの温もりを感じ、その幸せに浸る私の髪を撫でる手が心地よい。


「っで、いつ俺の部屋に来る?」


蒼大さんの言葉に満たされていた心地よさが吹き飛んだ。

閉じていた目を開けて、蒼大さんの胸から体を起こした。


「そのうち。」

「いつ?」

「仕事のピークが過ぎたら。」

「そうなると…………今月は納期だよな?春馬次第か?」

「変な圧力とか掛けないでよ、岡崎部長。」

「………。」


無言の返事は図星だったのか?

蒼大さんがソファーに凭れ掛かり、天井を仰いで目を閉じた。

暫くその姿を見つめていれば、閉じていた目を開けて見下ろしてきた。


「一花、年末のハワイは譲らない。」

「ああ~、うん、わかった。」

「予約しとく。」

「私の要望は?」

「あるのか?」


突然聞かれても思いつかない。

出来れば今回の仕事の参考になるお店を何軒かは回りたい。


「完全プライベートだぞ、一花。」


心を先に読まれてしまったらしい。
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