Marriage Knot
でも、彼はほんもののセレブリティ、お嬢様でもなく、一般事務で入社した平凡なOLの私にとっては高嶺の花だ。それで、私はじっと思いを温め続けてきた。寒い冬の日に、編んだばかりのカラフルな編み込み手袋にぬくもりを感じるような、そんな淡い想い。誰も知らない、私だけの宝物のような恋……。私は、もう自分の恋人にしたかのように副社長の美点を話し続ける茉祐の声も、だんだんと耳に入らなくなってきた。そして、このオーダーのために連日酷使した目を少し休めようと、ふっと上を見上げた。

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