ブーケ・リハーサル
会社を出て、少し奥まった道を通る。道なりに歩くと古びた定食屋が見えてきた。
「ここに入るよ」
副社長は引き戸を開け、暖簾を手で押し上げた。
「どうぞ」
自分のためでなく私のために暖簾を、と小さな感動を押さえつつ、そこをくぐった。
中はどこにでもある定食だ。混んではいないが、空いてもいない。程よい人の量で、知る人ぞ知る穴場の店なんだろう。
二人席に向かい合って座り、一つのメニューを眺める。
副社長とこの状況。なんだか不思議だと思う。そしてこの定食屋と副社長、雰囲気が全く合わない。
そんなことなど特に気にもせず、副社長はメニューを見ながら「唐揚げとサバ味噌、どっちにしようかなと」と呟いている。
「決まった?」
「私は親子丼に」
「じゃあ、頼もうか?」
ちょうどお水とおしぼりを持ってきた店員さんに、唐揚げ定食と親子丼を頼んだ。
「よくここには来るんですか?」
店内を眺めながら、副社長に聞くと「そうだね」と答えが返ってきた。
「へえ、ちょっと意外でした。副社長がこういう穴場な感じの定食屋さんを知っているって」
「まあ、こういう所のほうが気楽なんだ。会食とかで堅苦しい料理ばかり食べてるから」
「ここに入るよ」
副社長は引き戸を開け、暖簾を手で押し上げた。
「どうぞ」
自分のためでなく私のために暖簾を、と小さな感動を押さえつつ、そこをくぐった。
中はどこにでもある定食だ。混んではいないが、空いてもいない。程よい人の量で、知る人ぞ知る穴場の店なんだろう。
二人席に向かい合って座り、一つのメニューを眺める。
副社長とこの状況。なんだか不思議だと思う。そしてこの定食屋と副社長、雰囲気が全く合わない。
そんなことなど特に気にもせず、副社長はメニューを見ながら「唐揚げとサバ味噌、どっちにしようかなと」と呟いている。
「決まった?」
「私は親子丼に」
「じゃあ、頼もうか?」
ちょうどお水とおしぼりを持ってきた店員さんに、唐揚げ定食と親子丼を頼んだ。
「よくここには来るんですか?」
店内を眺めながら、副社長に聞くと「そうだね」と答えが返ってきた。
「へえ、ちょっと意外でした。副社長がこういう穴場な感じの定食屋さんを知っているって」
「まあ、こういう所のほうが気楽なんだ。会食とかで堅苦しい料理ばかり食べてるから」