ブーケ・リハーサル
「かしこまりました。お連れ様と一緒にお待ちください」

 フィッティングルームから出て、副社長の隣に座った。

「あの、ここは小物も売っていますけど、プシュケって洋服のみですよね」
「ああ。ここに置いてある鞄や靴などはプシュケが提携しているメーカーのものだ。うちの商品も店内に並べてもらえるようにしたいんだ」と副社長が小声で言った。

「伊達メガネやサングラスをですか?」
「そう、メガネ関係で提携している企業はまだないからな」

 コラボ企画は足掛かりで、最終目的はそこだったのか。コラボ商品なら、店内にメガネを置いてもらえる。それの売れ行きが上々であれば、うちのメガネを置くことができるかもしれないということか。

「パーティーの日、私、メガネしていきましょうか?」
「それはやらなくていい。あからさま過ぎる」
「分かりました」
「じゃあ、ちょっと偵察しますか」

 副社長と一緒に店内のものを見て回る。服のデザインや提携しているメーカーはどのようなものが多いのか。

「由梨ちゃん、なるべく恋人っぽい感じを出して。今、秘書の顔になってるから」
「恋人!」
「一番怪しいまれないからね。ほら、楽しそうにして」

 引きつった笑顔で「これ、かわいいね」と言ってみた。
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