誠の華−ヒルガオ−
「赤い紅を纏っていて…梅の香りがした…」
「……話してくれてありがとな。雪、そいつの側にいてやれ。またあいつが…凛が来るかもしれねえ」
「わ…かった…」
総司と雪は見逃さなかった。
女の特徴を聞いた時、一瞬だけ見開かれた永倉の瞳を。
「あなたの名前は?」
「今井 裕次郎です。先程は助けて頂きありがとうございました」
「いいのよ。町民を助けるのが私達、新撰組の仕事だから」
ニコッと笑って言うと男、裕次郎は頰を赤らめた。
「おやおや、新撰組に不思議な力を持つ女隊士がいたなんて知らなかったわ」
どこからともなく現れた女に新撰組は一斉に抜刀する。
辺りに漂う梅の香り、真っ赤な唇、忍装束を見に纏った凛だった。
「あらやだ。その顔には見覚えがあるわ。確か…永倉 新八ね。会うのは十年ぶりくらいかしら?」
弧を描いた紅い唇を永倉は鋭く睨みつける。
「……もしかしたら、とは思っていたが…まさか本当に凛だったとはな。よくも俺の前にのこのこと姿を現せたもんだ」