内実コンブリオ

座席に座って、何となく周りを見渡すと、スーツ姿の人を2、3人見かけた。

休日にまでお勤め、お疲れ様です。

そう思ったが、スーツとなると無意識に探してしまう。

憧れのあの人!という感じであればいいのだけれど、あいにくそんなものなんかじゃない。

情緒が不安定になる、そんな感じだ。

またいつ、どこで出会うかわからないからこそ、ひやひやする、というものだ。

いつも電車といえば、こんな思いをしていた。

仕事場に着いてしまえば、職場の皆さんと顔を合わせてしまいさえすれば、どうということはない。

それどころか、そんな風に思うことすら、気付かないうちにきれいさっぱり忘れている。

そして、帰りの電車も朝と同じような感情だ。

きっともう会うことなんてないはずなのに。

いや、絶対に。

確信なんて無いけれど、もう気にすることなんかじゃないということは、わかっている。



『ご乗車、ありがとうございました―』



アナウンスがかかり、次か、と気づく。

このまま無事に降りられますように。

さり気なくそんな風に、祈ってみた。
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