内実コンブリオ
改札を抜けて、裏のロータリーに出れば、すぐに角野先輩が自分の前に自家用車でやってきて、中から手を振ってくださった。
自分も軽くお辞儀をして、助手席へ乗り込む。
「すいません、遅くなりました。お願いします」
「はいはーい。別になんも遅くないけどな」
そう言って、車を発進させた。
何となく、先輩の横顔を見つめてみる。
笑顔の先輩は電話での態度と何も変わらず、それを見ていると、さっきまで不安がっていた自分を必要なく感じた。
安堵からか、自然と小さなため息が漏れた。
「どうしたん?」
先輩は、自分の思わず吐いた、些細な息を聞き逃さなかった。
この人の観察力には、毎回驚かされる。
むしろ、怖いくらいだ。
「いえ、別に…」
「何や、また上手いこと、かわされるん?俺」
今頃になってから、気づいた。
以前に、角野先輩と気まずくなった状況に似ている。
というよりは、まさにこれだ。
じゃあ今、打ち明けたら、一体どうなる?
可笑しな奴だ、と思われない?嫌われない?
不安で仕方がない。
何故か顔が熱くなり、目が潤みかけた。
でも、今言わなければ、二度と切り出す機会はない、そんな気がしていた。