内実コンブリオ
「緊張とかしないんすか?」
「し、そりゃ、しますよ。頭、真っ白でした」
「またまたー」
それは、本当のことだった。
聞く側に、古い知り合いが一人居るというだけで、いつもとは違う何かを感じた。
こんなにも、わけがわからなくなるなんて。
「俺なんて終わったのに、まだ緊張してますよ。心臓、止まってるかも」
そんなことを言った栗山くんは、自身の左手首に、右手の指をあてて、脈を計る様な仕草をした。
二人の間に、しばらくの沈黙が訪れる。
すると「あれ、本当に無いかも…」と不安げに呟いた。
「脈って、どこでしたっけ。場所、間違えてんのかな」
栗山くんは、独り言の様に呟きながら、手首を自分に差し出す。
これは「お前、計ってみろ」とかいう意味なのだろうか。
いかにも、わざとらしい。
彼のわざとらしい話し方は、昔にも何度かあった気がする。
だけど、いつもほんのり、と優しさがこもっていた。
それは、今もだ。
相変わらず、ぎこちない自分に、思いっ切り気を遣ってくれているのがよくわかる。
少しでも、気まずい沈黙を作り出さない様に、と。