内実コンブリオ



駅のホームへ降り、改札を抜けて、暗くなった帰路につく。

しかし、本当に不思議だ。

人って、人の顔を意外と忘れていないもの。

何もなしに思い出せって言われても無理なのに、実物を目の前にすると、一瞬であの頃の全ての感覚が戻ってくる。

栗山くんと再会した今日が、まさにその通りだ。

中学生そのまま、ではないけれど、少し埃をかぶって出てきた想い出の品を見つけたような感じ。

本当に驚いた。

髪型もほんの少し変わっていたけど、すぐに誰だかなんてわかった。

今日はまるで、サプライズを仕掛けられた様な一日だった。

でも、浮かれすぎない様に気をつけて、ちゃんと自宅の扉の前まで帰ってくることができた。

中に入って、電気をつけると、至っていつもと変わることのない部屋。

そして、今ひとつ面白みもなく、完璧でもない自分の部屋。

外ではあんなにも、面白い出来事があったというのに。

同じ現実なはずなのに、あまりにも差がすごい。

今は実体として残る物が無いから、余計にそう思える。

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