内実コンブリオ
部屋着に着替えようと、何気なく上着のポケットに手を突っ込んだ。

いや、あった。

実体として残っていた物が、一つだけある。

ポケットの中から出てきた物とは、今日の別れ際に栗山くんから手に握らされた一枚の紙切れだった。



『これ、俺の連絡先』



耳元で囁かれたのを思い出すだけで、耳や顔が熱くなる。

二つ折りにされた紙を開いてみれば、そこには携帯電話と思われる数字が並んでいた。

これをあの場で一体、いつの間に書いたのやら。



『せっかくなんで、持って帰ってくださいよ』



そう言われたものの、これを持って帰って、どうすればいいのだろう。

何をすればいいかなんて、ただ一つ。

わかっているけど、少し気が進まない。

だいたい、角野先輩という新たな出会いがあったにも関わらず、あまりにも女々し過ぎる。

いつまで経っても、そんな自分が嫌になる。

そう思っているはずなのに、期待する気持ちが心の隅に居るというのだから、なんとも卑しい。

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