内実コンブリオ

何故か安堵して、胸を撫で下ろす。



「あの、確か、咲宮さんの上司は…はっ『華ちゃん』って!呼んでた、よね?」



何故、ここで角野先輩が出てくるのか?

安堵したはずの気持ちが、また引き締まる。



「俺も下の名前で呼ぶべきかと…
てか、呼んでいい?」

「…どうぞ、お好みで」

「じゃあ。華さん…」



名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ね上がる様だった。

くすぐったい様で、そわそわする様で…

馴れない感覚に戸惑ってしまう。


「じゃあ…栗山くんは、やっぱり栗山くんで」



自分が照れ隠しのつもりで言うと、栗山くんは案の定、不機嫌を顔に貼り付けたままで笑った。

二人一緒に水の入ったグラスを手に取って、一口飲む。

照れ隠しすらも飲み込む、空気。

それでも、自分の訂正する気は、一切起きなかった。
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