マリンシュガーブルー
 そして美鈴と宗佑は顔を見合わせ、二人揃ってふっと笑ってしまう。

「俺もそう思います。生真面目に俺の料理を食べてくれていました」
「私もです。甘いものに目がないようでお子様向けのチョコフレークを差し上げようとしたら、自分は遠慮するとおっしゃって……。とても食べたそうにしていらっしゃったのに」
「そうなんです。兄ってあんな顔ですっごい甘党なんですよ。私と一緒にケーキバイキングについてきちゃうんですよ」

 妹さんとケーキバイキング! あの厳つい顔で! 美鈴も宗佑も笑いそうになったが堪えた。でも、なんだかわかる。あの人なら行きそうだと姉弟で頷きあってしまう。

「そのお醤油アイスも、お兄様とても気に入ってくださったようでした」
「まあ、やっぱり。兄が好きそうだと思いましたの。見逃すはずがありませんもの。ほんと、とっても美味しいわ、これ」
「あの、どうして、お兄様がうちの店に通っていたとお判りになったのですか」

 尋ねると、アイスをほおばっていた彼女が上品な和ハンカチで口元を拭く。

「いつ、その女性を紹介してくれるのかとしつこく連絡したんです。仕事柄ですが滅多に電話も出てくれなくて、メールがやっと返ってくるぐらい。そのメールに『松山の人だから、いますぐには連れてこられない』との返信がありました」

「松山だけでは探せないと思いますが」
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