マリンシュガーブルー

「港で、姉と弟だけで切り盛りしている美味い店に通っていたと話してくれました。私たち兄妹は早くに父を亡くしています。兄妹で支え合ってきたことも多かったです。ですから、早くに親を亡くして子供達だけで頑張る姿が兄は気になっていたようです。そこのお姉さんを、近いうちに会わせたいと言ってくれました。ただ仕事の関係で、いまは彼女と連絡が取れない状態だとも言っておりました」

 姉ちゃん! 弟が嬉しそうに美鈴の背を叩いた。

 彼は美鈴を忘れていなかった。二ヶ月会えないのも、仕事のため? 警察官なのに、ヤクザのふりをしているだけで、人には言えないような仕事だったのだと今ならわかる。だから、今も、仕事で彼が動けなくなっているだけ?

「そのメールだけの兄が『香江にしか聞けない』と、最近、妙に思い詰めた電話をしてきたんです。『子供達がお腹にできた時どんなかんじだったのか』とか、『つわりがわかるのは何週目ぐらいだ』とか、変に遠回しに聞いてきたのです。どうしてそんなこと聞くのと問うても、捜査で知りたかっただけ、他の女性には聞きづらいと誤魔化していましたが、そんなわけありません。捜査となればそんなこと平気で兄は聞くでしょう。それが『捜査、仕事ではない』から他人には聞けない、妹の私に聞いてくる。それでぴんと来たんです。港のお店の彼女さんと、そうなったのかもしれない。なのに兄はいつまで経っても私のところに連れてきてくれない。広島の兄の自宅に行ってもいつだって留守で、仕事で忙しくて会えないのか、それとも躊躇っているのかやきもきしてたんです」

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