マリンシュガーブルー
「それで、お兄さんが姉に会いに来る前に、香江さん自ら姉を捜しに来てくださったということですか」

「はい。だって、兄が会いに来られない間に、もし、貴女が兄のことを諦めて赤ちゃんも諦めてしまったらと思うと居ても立ってもいられなくて。またタイミングが合わなくて女性と上手くいかなかったというなら兄も諦めつくのでしょうけれど、赤ちゃんがだめになったと知ったらもう兄のことだから、精神的に大打撃を受けるのが目に見えています。なのに、仕事でどうしても動けないこともよくあるようで……」

 そう苛む妹の気持ち、その気持ちがこの店と美鈴を捜し当てたのだろう。

「妊娠はしておりません、安心してください」

 ここまでわざわざ捜しに来てくれた妹の香江のために、美鈴ももったいぶらずに告げた。
 香江が残念そうにうつむいた。

「そうでしたか……。もしかすると、そうであるならば兄は……。いままでの仕事だけの生活に戻ろうと思うかもしれません」

 さらに香江は申し訳なさそうに、美鈴に話してくれる。

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