猫と手毬
ちょっと日も高くなり始めた頃。



さっきより暖かい空気の中僕はクッションの上の手毬で遊んでいた。



今開店時間になったらしい。



ドアを全開にして人が入れるようにしていた。



「開店したよ。これからお客さん来るから藍くんも頑張ってね。」



そう言ってカウンターの方へ行ってしまう。



すると最初に来たのは女の子とそのお母さんだった。



「ねーねー!猫さんがボールで遊んでるよ!」



「そうね。せっかくだから見ていきましょうか。」



そう言ってお店の中に入っていく。



「いらっしゃいませ」



立樹は女の子にもこんにちはと言って話している。



でも女の子はお母さんと立樹の会話に飽きたのかしゃがんじゃった。



どうしたらいいかな…



そう考えていると僕のクッションの上に乗っかっている手毬を思い出す。



大きさ小さいけど遊べるかな?



そう思いながら灰色の手毬をコロコロ転がして女の子の方にちかづける。



「ニャー」と鳴いて女の子に遊ぼうと言う。



聞こえないだろうけど。



「遊んでくれるの?」



そう言って手毬を持つ。



僕はほかの手毬も女の子の方にコロコロ転がしていく。



「猫ちゃん可愛い!私も遊ぶ!」



そう言って僕に手毬をコロコロこ転がしたり少しだけポンポンと弾ませたりしてくれる。



「わー!楽しい!猫ちゃんボール遊びじょうず!」



手毬をコロコロ転がしながら眩しい笑顔でわらってくれる。



それが嬉しくて僕はどんどん転がしていく。



「お、藍くん仲良くなったの?」



突然立樹の声が聞こえてきて体を弾ませる。



話終わったのかな?



「そうなの!猫ちゃんが遊んでくれたの!」



そう笑いながら女の子は言う。



「猫さん偉いわねー。ありがとうね?私の娘の遊んでくれて。」



そう言って僕の頭を撫でてくれる。



「私も手毬ほしい!猫ちゃんと同じように遊びたい!」



そう言って楽しそうに棚にある手毬を選んでいく。



「この子は藍くんって言うんです。昨日僕の家に来たんですよ。」



「そうだったんですか。私の娘は猫が好きで…遊んでもらって嬉しかったんだと思います。」



そう言って手毬を入れた紙袋を受け取る。



「ねー!おじさん!また猫ちゃんに会いに来ていい?」



そう立樹に聞いている。



「いいと思うよ。藍くんも楽しそうだったからまた遊んであげて?」



そう言って僕の事を抱き上げて僕の腕を振る。



「らんくんって言うの?じゃあまたくるね!らんくん!」



そう言ってその親子は帰っていった。



「初仕事どうだった?」



そう抱き上げられたま聞かれる。



「凄くじょうずな接客だったよ?お友達も出来てたね。」



そう僕の事を褒めてくれる。



「じゃあ次のお客さん来るかもしれないから藍くんまたお仕事がんばってね?」



そう言って立樹はカウンターの方に行ってしまう。



でもあの子楽しそうにしてくれたな。



ちょっと嬉しかった。



僕はクッションを外に引っ張りだして日向ぼっこをしながらお客さんを待っていた。



次はどんなお客さんが来るんだろう。
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