猫と手毬
その日はお客さんも沢山来てくれた。



おばあちゃんやおじいちゃん。



小さい子供までたくさんの人が来てた。



まだお昼くらいだけどお店の中には僕と立樹とお客さんがいる。



お客さんは青と水色と白の手毬を取ってカウンターに行く。



そして立樹はそれを紙袋に詰めてお客さんに渡す。



するとお客さんは笑顔で僕を撫でてお店から出ていく。



その繰り返しだったけど…見ていて飽きなかった。



「さぁ。お腹空いただろう?お昼ご飯にしよう。」



そう言ってお皿の上に朝買ってきたネコ缶の中身を出して僕の前に置いてくれる。



「藍くんはお客さんに攻撃なんかもしないし暴れたりなんかしないから偉いね。僕が猫だったら棚にある手毬とかひっくり返しそうだよ。」



そう言って食べてる僕の頭を撫でる。



「閉店は4時だよ。今1時だから…後3時間弱かな?」



この時間までにもうお客さんは20人くらい来てたのにこれからまだ来るんだ。



さっきみたいに僕と遊んでくれる人居ないかな。



「お昼からは幼稚園の帰りがあるからきっと沢山のお客さんが来るよ。」



また子供が来るの?



そしたら遊んでくれるかな…?



「あと1時間後に沢山の人が来るからね。藍くんもお仕事頑張ろう。」



そう言って立樹はカウンターに戻る。



僕はご飯が乗ってたお皿をずりずりと押したり引っぱったりしてカウンターの裏に置いてクッションの方に戻った。



僕はまだ人が来てなかったから日向ぼっこしながら手毬をコロコロ転がして遊ぶ。



この天気には似合わないような灰色と黄色と黄緑の手毬。



だけど灰色なのに鮮やかで曇ってなんかいなかった。



この手毬は遠くから見るとそらが曇ったような色しているけどよく見ると雲のすき間から日差しがさしてるみたいに暖かい。



そんな手毬を前足でコロコロ転がしながら次のお客さんを待っていた。



すると次に来たお客さんは若い女性の人だった。



「すいません。プレゼントにオススメの手毬をおしえてくれませんか?」



そう立樹に聞いてた。



「プレゼントですか。どんな手毬がいいんですか?」



「ちょっと濃い色の手毬が欲しいんですけど。」



その要望を聞くと立樹は手毬を探していく。



立樹が選んだのは深緑と緑の手毬。



でも女性は欲しいのはこれじゃないみたいだった。



僕はクッションの上に乗ってる手毬を見つめて濃い色を探し出す。



すると藍手毬が目にはいる。



これならと思って持っていこうとするけど…遊んだものじゃだめだよね。



そう言って棚を見てみる。



すると結構高い位置に藍手毬が1個あった。



多分1mぐらいあるだろう。



僕は近くにあった机や棚を利用してそこまで登ろうと頑張る。



手毬の乗ってる棚を足場にして藍手毬がある所まで登る。



登りきって藍手毬を頭で押す。



棚から落ちた藍手毬は床に落ちてポンポンと跳ねる。



「藍くん。そこは危ないよ。それに棚から手毬を落としたらだめだろう?」



そう言って立樹は僕を抱き上げて棚から下ろす。



立樹は落ちた手毬を拾う。



「もしかして藍くん…これをお客さんに教えたかったの?」



そう聞いてくる立樹に僕は「ニャー」と鳴く。



「濃い青色の手毬…これ猫ちゃんが選んだんですか」



「藍くんが勝手に。きっと濃い色の手毬と聞いてこれを思い出したんでしょうね。」



そう言って立樹は僕が落とした藍手毬を女性に差し出す。



「これにします!猫ちゃんが考えてくれたんですし!紺色の手毬も綺麗です。」




女性は気に入ったように藍手毬を受け取る。



「これは藍手毬と言うんです。この猫の名前も藍くんで名前はこの手毬から来たんですよ。」



「へぇ…藍くんね?選んでくれてありがとう!」



そう言って女性は僕を抱き上げてくれる。



女性は手毬を受け取って「また来ますね!」と言ってお店から出ていった。



「藍くんありがとう。藍手毬を選んだのは正解だったみたい。今度から藍くんのオススメも取り入れてみようかな?」



僕は「ニャー」とないてやりたいと言う。



聞こえてないんだろうけど。



「そっか。じゃあ今度から藍くんのオススメも聞こうかな。」



僕のお仕事は看板猫と猫のオススメをやる係になった。


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