気高き国王の過保護な愛執
「この城内には、あなたの味方が少なすぎると案じておりましたので」


大柄な大臣が、丁寧にフレデリカと視線を合わせる。フレデリカはようやく、長い間の疑問が解けた。


「ディーター様が行方不明になられ、そのさなかに先王とギュンター様がお倒れになった当時、ディーター様には捜索隊が出されました」

「卿が率いていた、あの一隊だろう?」


ゲーアハルトはゆっくりと首を横に振る。


「私は捜索隊より先にあなたを見つけるため、信頼できる者だけを集め、秘密裏にあなたを探していました」

「どうして…」

「捜索隊には、見つけ次第あなたを殺せという王妃の命が下っていたからです」


力強い槌の音だけが、しばらく響いた。


「卿は、おれではないと思っていたのか」

「正直、わかりかねておりました。ですがディーター様が王位を狙っていたという妃殿下の説には、首をひねらざるを得ませんでした」

「なんたって、闘争心が皆無の兄さまだものね」


イレーネの言葉に、ゲーアハルトがうなずく。


「ジャン・ミュイは王城の敷地の外れで、一度はあなたに追いついたのです。矢を射かけましたが、あなたは崖を転がり、河に落ちて見えなくなった」

「よくおれを見つけてくれたな…」

「なんとしてでも見つけると、決めておりましたから」


厳格な大臣らしくもない精神論に、ルビオが不思議そうにする。「古い話になります」とゲーアハルトが続けた。


「王国軍の兵士だった私の父は、戦場であなたの祖父君、ディートリヒ1世陛下に命を救っていただきました。あなたのおじい様は国王でありながら、けがをした一介の少年兵を引きずって塹壕に戻るような方だったのです」


覚えていないのではなく、初めて聞いたのだろう、興味津々という顔でルビオはゲーアハルトを見上げている。


「あなたは彼が自分の名を与え、幼少の頃からその誠実さと才気に、国の未来を託したいと願われていた王子」
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