元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
与えていただいた部屋で荷物の整理をしていると、出海君が帰ってきた音がした。
出迎えるべき?
いや、それは出過ぎた真似か?
いやいや、居候させていただいている身としてはやはり挨拶は大事にすべき?
少し悩んで、ドアを開く。
玄関でコートをハンガーにかけ、ブラッシングしている出海君に
「お帰りなさい……ませ」
と声をかけると。
彼はこちらを見て、はにかみながら、
「ただいま戻りました」
と言った。
……う。
……ちょっと。
……はにかむとか、反則じゃない?
動揺するのも悔しいので、「お食事、すぐに召し上がりますか?」と業務的にきいてみる。
「はい。でも自分でやりますから、大丈夫ですよ。希奈さんは疲れてるでしょうから、どうぞ休んでいてください」
……パーフェクトなお答え。
元々は彼のプライベートな空間。
よそ者が入りこんでるのは結構なストレスなんじゃないかと思う。
ひとりで過ごしたいというメッセージを、相手への思いやりにくるんで表現するとか、コミニュケーションも昔と比べて格段に洗練されてる。