華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
アレックス王子の気配が完全に消えた瞬間、身体に入っていた力がすっと抜ける。
ガクッとその場にへたり込みそうになるのを、目の前の鉄格子を掴んでなんとか堪えた。
一週間後に、処刑……。
普通なら、動揺するはずだ。
平常心ではいられないほどに。
けれど、あれだけ激しく鳴っていた心臓も、嘘みたいにいつも通りの穏やかなものになっていた。
不思議とホッとしている自分がいた。
きっと、ようやく死ねる、ようやくこんな生活から逃れられる、そういう思いなのだろう。
そりゃあ、民衆の前で晒されながら死んでいくのは嫌だ。
でもこの長い生活から考えたら、それはほんの短い時間の出来事。
死ぬ間際だけの我慢だ。
肉体と意識が無くなってしまった後の私が、どう言われようと知ったことではない。
愚女でも悪女なんでも、好きなように言ったらいい。
私にはなにも関係のないことだから。
それよりも、もう色々考え苦しむ必要がない、それが嬉しくて仕方なかった。
自由になれる。
"死"をもって、私は晴れて自由の身となれるんだ……!
私はまたベッドの上に座り、ぼおっと前を見つめていた。
早くその日が来ないかと、そう思いながら。