華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
―――次の日。
いつもと同じパンを平らげたあと、いつものようにベッドに座っていると、また入口が騒がしくなった。
カツカツと、昨日と同じ足音が響く。
虚ろげな瞳で視線を音の方に向けると、アレックス王子が鉄格子の向こうに立っていた。
「……ご機嫌麗しゅう、アレックス王子」
重い身体を上げ、王子に一礼をする。
相変わらずその表情は不機嫌そのものだ。
「どうだ、昨日は。死への恐怖で一睡も出来なかっただろう?」
意地の悪そうな笑みを浮かべて、そう話した。
正直昨日は寝られないどころか、布団に入って五分もかからず記憶がない。
そのまま起こされるまで、しっかり熟睡してしまった。
「……えーと……」
「……寝られたのか」
「……」
返答に困る。
『はい、寝られました』って正直に答えたらいいものか。
だってその表情、明らかに逆の答えを求めているんだもの。
ここで嘘を言ったところで、見張りの騎士は事実を知っているわけだし。
なにも答えない私に対して、王子の表情はみるみると不機嫌さを増していく。
蝋燭の明かりで良くはわからないが、怒りで顔が赤くなっているように感じた。