華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
そう言い終わる頃には、私の目の前に立っていた。
金色の瞳が私を射抜く。

王子はドレスの裾を掴んでいた私の手を取ると、唇へと寄せた。
生暖かな息が、手の甲にふっとかかる。

「だからそう先を急ぐな、ソフィア。言っただろう?私を楽しませてくれ、と。絶対に死なせない。なぜならそなたは……」

と言いかけたところで、王子は口を閉じる。

ただ瞳だけが、私をじっと見つめていた。


ドキリと胸が弾む。


「――行こう。これから住む部屋を案内する」


結局、言葉の続きを話すことはなかった。

少しの沈黙を挟んでそう言うと、手を離し私に背を向ける。


視線が外れたのに、胸の高鳴りが収まらない。

どうして落ち着かないのだろう。
理由が見当たらない。


王子は、"なぜなら"のあと、どう言葉を続けようとしたんだろうか?

そして、王子は知っているの?

私が今一番不安に思っていることを。


気になることがたくさんあった。
でも、聞けなかった。

言葉を掛けられないまま、私は王子の後をついて行くしかなかった。


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