ひとはだの効能
 アルコールで赤みがさした目元にじんわりと涙が滲む。

「遊馬さんのおかげで、葉月のこと一歩踏み出そうって思えたけど……。お互いに学校とバイトが忙しくてなかなか会えないし、やっと今日予定が合ったと思ったら、結局ダメになっちゃって……。私いい加減くじけそうです」

 奥手な莉乃ちゃんなりに、今日のために頑張ってきたんだろう。堪えきれずに溢れ出した涙を手のひらでごしごしと拭う。

 その姿がなんだか自分と重なって、気が付けば俺は莉乃ちゃんに手を伸ばしていた。

「莉乃ちゃん頑張ったんだね、すごく」

 頭を撫でてやると、またぼろぼろと涙をこぼす。

「う……、遊馬さぁん……」

 クシャ、と莉乃ちゃんが顔を歪めたその時だった。

 それまで大人しく寝そべっていたアルが、窓の外に向かって唸り声を上げたかと思うと、けたたましく吠え出した。


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