ひとはだの効能
「アル、どうしたのっ!?」

 ガタッと音を立てて席を立ち、莉乃ちゃんは慌ててアルに駆け寄った。

「落ち着いて、アル。大丈夫だから」

 莉乃ちゃんがアルの首に腕を回して抱き寄せると、アルは吠えるのを止めた。しかしまだ何かを警戒しているのか、外に向かって唸り声を上げている。

 興奮したままのアルを落ち着けようと、莉乃ちゃんが背中を撫でてやる。俺もアルの元へ駆け寄り、店の外に視線を向けたが、怪しい人影も何も見当たらなかった。

「アル、どうしたのかな。外は何も異常ないようだけど」

 しばらく莉乃ちゃんが撫でさすっていると、ようやくアルは落ち着きを取り戻し、再びツリーの下に寝そべった。

「驚かせてすみません。ホントどうしたんだろ。こんなに興奮したの、あの時以来です。ほら、あの……」

 莉乃ちゃんが何かを言いかけたその時、バン! と勢いよく店のドアが開いた。

「きゃっ、何!?」

「莉乃!」

 驚いて振り向くと、まだバイト中のはずの葉月くんが、息を弾ませてドアの前に立っていた。
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