ひとはだの効能
「葉月! バイトじゃなかったの?」

「店長にお願いして、早めに抜けさせてもらった。……やっぱり莉乃のこと、気になって」

 駅からここまで一息に走って来たのだろう。葉月くんの息はなかなか整わない。

「それなのに、なんでおまえ、この人と一緒にいるの」

 莉乃ちゃんとディナー用にセッティングされたテーブルを交互に見比べて、葉月くんが不機嫌そうに眉をひそめた。これは……誤解を解く必要がありそうだ。

「葉月くん、とりあえず座ったら? 今水を持って来るから、落ち着いて莉乃ちゃんとゆっくり話しなよ」

 自分が使った食器を下げ、キッチンに向かう。冷蔵庫からよく冷えたレモン水を取り出してグラスに注ぐと、葉月くんに手渡した。

「どうぞ」

「……どうも」

 冷たいのも構わずに、葉月くんはレモン水を一気に飲み干した。

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