ひとはだの効能
「イブの夜に一人で食事はわびしいから、莉乃ちゃんとアルに付き合ってもらってただけだよ。別に深い意味はない」

「……そうですか」

 新しいワイングラスをセットしながら俺が言うと、険しかった葉月くんの視線がほんの少し和らいだ。

「葉月くんもワインでいい?」

「ありがとうございます」

 それでもまだ、ムッツリとした表情を隠さない葉月くんのグラスにゆっくりとワインを注ぐ。

 一方の莉乃ちゃんは、葉月くんの俺への態度に困惑しているようで、ハラハラとした面持ちで俺たちを見守っていた。

「俺はメインの仕上げしてくるから、二人で乾杯してて」

「えっ、遊馬さん……!」

  莉乃ちゃんが縋るような瞳で俺を見つめ、『葉月と二人にしないで!』と訴えてくる。

『大丈夫、頑張って』

 葉月くんからは見えない位置で、声に出さずにそう言うと、莉乃ちゃんはとうとう覚悟を決めたのか、一度肩で大きく息をして頷いた。

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