ひとはだの効能
「……彼、私が新入社員のときの指導員だったの。とにかく仕事のできる人で、後輩の面倒見もすっごくよくて。そんな彼にずっと憧れてたから、つき合ってほしいって言われてめちゃくちゃ嬉しかった……」

 それはもう毎日有頂天だったんだよ、と照れたように笑う。なんとなく、人気のない廊下でこっそりガッツポーズをする香澄さんの姿が目に浮かんだ。

「難しそうな得意先にも自分から手を上げるような人だったし、とにかく仕事に対しての熱意がすごいから、忙しくて会えない日が続いても、仕方ないって思ってた」
「へえ」
「私も仕事好きだから。そういうとこ、お互い様だったしね」
「うん、香澄さんが仕事好きってことはずっと見てたからわかるよ」
「そう?」

 再度頷くと、香澄さんは嬉しそうに目元を綻ばせた。


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