ひとはだの効能
 足音で気がついたらしい。アルがチラリと顔を上げる。俺だとわかると安心したのか、数回しっぽを振って、また顔を前脚の間に埋めた。

「お待たせ」

 前菜を脇に避け、メインの皿を置く。二人とも、まだ料理にも一切手をつけていなかった。

「よかったら、冷めないうちにどうぞ」

「ありがとうございます」

 そう言って、莉乃ちゃんは俺にぎこちない笑みを浮かべる。

 一方の葉月くんは改まった雰囲気に緊張しているのか、それともただ照れているだけなのか。軽く会釈をしただけで、表情を変えない。

 放っておくといつまでも黙りこくっていそうな二人に、さすがの俺も、心配を通り越して呆れてくる。

「莉乃ちゃんも、葉月くんもさ、一体いつまでそうしてるつもり?」

 俺の語気の鋭さに、莉乃ちゃんがびくりと肩を揺らした。

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