ひとはだの効能
アルが吠えたのは、店の外に香澄さんの姿が見えたから? でも……まさか。
店の時計を確認すると、午後八時を少し過ぎたところだった。
アルの様子がおかしかったのは、もう一時間以上も前。おそらく披露宴が終わったくらいの時間だ。
ひどい振られ方をした元カレとはいえ、一応恩のある先輩の結婚式だ。二次会の幹事まで任されている香澄さんが、そこを抜け出してここまでやって来るなんて到底考えられない。
第一、香澄さんがそこまでする理由が見当たらない。
「遊馬さん、……大丈夫ですか?」
「あ、ごめん莉乃ちゃん」
声を掛けられて我に返ると、莉乃ちゃんが拾ってくれたトレイを胸に、心配そうな顔で俺を見上げていた。
「ありがとう。ちょっとぼうっとしちゃって……」
トレイを受け取りながら目に入った不安気な様子の莉乃ちゃんに、昼間チャペルで見た香澄さんの表情が重なる。
俺を見つけたときの、少し焦ったような表情。
あの時名前を呼ばれた気がしたけど、気のせいだと思い込んで俺はあの場から走り去った。
もしあれが、俺の気のせいじゃなかったら……?
店の時計を確認すると、午後八時を少し過ぎたところだった。
アルの様子がおかしかったのは、もう一時間以上も前。おそらく披露宴が終わったくらいの時間だ。
ひどい振られ方をした元カレとはいえ、一応恩のある先輩の結婚式だ。二次会の幹事まで任されている香澄さんが、そこを抜け出してここまでやって来るなんて到底考えられない。
第一、香澄さんがそこまでする理由が見当たらない。
「遊馬さん、……大丈夫ですか?」
「あ、ごめん莉乃ちゃん」
声を掛けられて我に返ると、莉乃ちゃんが拾ってくれたトレイを胸に、心配そうな顔で俺を見上げていた。
「ありがとう。ちょっとぼうっとしちゃって……」
トレイを受け取りながら目に入った不安気な様子の莉乃ちゃんに、昼間チャペルで見た香澄さんの表情が重なる。
俺を見つけたときの、少し焦ったような表情。
あの時名前を呼ばれた気がしたけど、気のせいだと思い込んで俺はあの場から走り去った。
もしあれが、俺の気のせいじゃなかったら……?