ひとはだの効能
「莉乃ちゃん、ごめん。俺ちょっと出かける」

「えっ? 遊馬さん急にどうしたんですか」

 莉乃ちゃんの声を背に、バックヤードに駆け入る。ダウンコートと貴重品を入れたボディーバッグを掴み、店内に戻った。

「店はそのままにしといていいから、帰るときに表の鍵だけ掛けてもらっていいかな」

 俺の勢いに呆気に取られている莉乃ちゃんの手のひらに、半ば無理やり店の鍵を載せる。

「わ、わかりました」

 ツリーの方を見ると、いつもは無表情な葉月くんもさすがに驚いた顔をしていた。

「葉月くんも、せっかく来てくれたのにごめんね。好きなだけゆっくりして行っていいから。それじゃ」

「あ、遊馬さん!」

 店を出ようとした俺を、葉月くんが呼び止める。何事かと振り向くと、莉乃ちゃんの隣まで来た葉月くんが、彼女の肩をグッと引き寄せた。

「頑張って、ください」

 俺と葉月くん。全然違う種類の人間だなってずっと思っていたけど……。なかなか実らない恋愛に苦しんでいた者同士、何か通じるものがあったのかもしれない。

「……ありがとう!」
 
 葉月くんのその一言が、確かに俺の背中を押した。

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