ひとはだの効能
 店の前に自転車を乗り捨て、入り口へ向かう。

 莉乃ちゃんたちは、すでに帰ってしまったらしい。灯りの落ちた店の前に、ドレッシーなパンツスーツにスタンドカラーのコートを来た香澄さんが立っていた。

 両手に昼間見たブーケを抱え、俯いている。他に荷物はないようだから、やはり披露宴の途中で抜け出して来たのだろう。その理由わけを知りたくて気が逸るが、長い髪が顔を隠し、表情がうかがえない。

「香澄さん」

 俺が声を掛けると、香澄さんはビクッと肩を揺らした。ゆっくりと顔を上げる。

「……遊馬くん」

「寒かったでしょ。とりあえず中に入って」

 合鍵で店を開け、照明とエアコンのスイッチを入れにバックヤードへと向かう。

 続く足音がしないのを不思議に思い振り向くと、香澄さんはドアの外に立ったまま、中に入るのをためらっていた。

「香澄さんどうしたの?」

「だって……やっぱり私、遊馬くんの邪魔したんだよね?」

 さっきまで莉乃ちゃんと葉月くんがいたテーブルを見て、香澄さんはくしゃと顔を歪めた。

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