ひとはだの効能
「もうお客さんはいなかったし、邪魔なんて……」

 そこまで言ってはたと気付く。

 香澄さんは、俺と莉乃ちゃんが一緒にいるところを見たから、中に入らなかったのか?

 それって、ひょっとして……。

「香澄さん、入って」

 淡い期待を胸に、寒さで小さく震える手を取り香澄さんを店の中に引き入れる。

 逃したくなくて、香澄さんの手を掴んだまま彼女の身体越しに店のドアを閉めると、軽く抱き寄せるような形になった。

 動揺したのか、腕の中で彼女がピクリと身体を揺らす。

「正直に、話して」

 そっと身体を離し、俯いたままの彼女の顔を覗き込む。

 ちゃんと目を見て、香澄さんと話をしたかった。

「まだ式の途中だったんでしょ? それなのに、香澄さんは……どうしてここに来たの?」

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