ひとはだの効能
「お願いだ から、もうやめて。恥ずかしい……」

「やめないよ。今まで我慢してきた分、俺は何度でも香澄さんに好きだって言う」

「遊馬くん……」

 香澄さんはさらに大きく目を見開くと、何かを堪えるように震える唇を噛み締めた。

「……私も、ずっと我慢してた」

 涙が一粒、二粒、ぽろりと頬を伝い落ちる。 

 止まない涙の気配に、彼女の頬に手を伸ばす。溢れる雫を拭ってやると、香澄さんは俺の手に手のひらを重ねた。

「彼女の……莉乃ちゃんの存在を知って、遊馬くんのことを想うのを止めようと思ったの。でも前の彼の時のように、思いに蓋をすることはどうしてもできなかった。……だから今日ここに来たの」

 固唾を呑んで、香澄さんの告白を見守る。俺同様、今まで気持ちを抑えてきたという彼女から溢れ出る言葉を、一言も聞き漏らしたくはなかった。

「遊馬くん、横浜の式場まで来てたよね? 私がブーケ受け取ったの、見てたでしょう? あの時、菅井と一緒にいたのを……あなたに誤解されたくなかったの」


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