ひとはだの効能
「仕事頑張って。でも、絶対に無理はしないで。何があっても、自分の身体と赤ちゃんのことを最優先に考えて」

 仕事が大好きで、結婚しても子どもが出来ても、続けることを選んだ香澄さんだ。自分でも気づかぬうちに無理をしていた、ということがないように、時には香澄さんにうるさがられるほど、俺は毎朝こう言い続けている。

「大丈夫だよ。遊馬くんはホント心配性だなぁ」

 くす、と笑みをこぼす香澄さんをもう一度胸の中に閉じ込める。彼女の香りとぬくもりに触れるたび、絶対に失いたくないと思う。

 俺はいつも、彼女が無事にここへ帰って来ることをひたすら祈っている。

「大丈夫だよ。遊馬くんの祈りはちゃんと私に届いてるから」

 そう言って香澄さんが見上げた先には、『Pregare』の看板があった。

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