ひとはだの効能
 よく晴れた九月の最初の日曜日、Café Pregareはようやくオープンを迎えた。

 観光客だけでなく、地元に住む人も客として取り込むため、開店時間はかなり早めの午前七時にした。

 準備期間中に店に寝泊まりしていて、夜が明けて間もない頃から海辺で犬の散歩をする人やランニングをする人、ロードバイクに乗る人たちがいて、思っていたよりも街が動き出す時間が早いと感じたのだ。

 朝食を提供すれば、毎日のように通ってくれる人も増えるかもしれない。

 観光客の多い夏休みシーズンが終わってからのオープンで、果たしてどれくらいの客が集まるか心配していたが、予想が当たり、店を開けるとほどなくして店内は満席となった。

「いらっしゃいませ」

「おはようございます。あの、この子と一緒でも大丈夫ですか?」

 来店第一号は、カラフルなランニングウェアを身に着けた二十歳前くらいの女の子だった。真っ黒な毛並みが美しいニューファンドランドを連れている。

「おとなしい子だから、他のお客さんに吠えたりしないと思うんですけど……」

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