ひとはだの効能
「莉乃ちゃんが家庭教師してるのって中学生だっけ? はい、お待たせ」
「わ、ありがとうございます! 今日のも美味しそう」

 今日の莉乃ちゃんのオーダーはカフェモカ。
 通常ならエスプレッソで作るところをブレンドにして、前回より少しだけスチームミルクの割合を減らしてたっぷりのホイップクリームを乗せチョコソースをかける。俺からしたら、甘すぎて歯が痛くなりそうな代物だが、今の莉乃ちゃんにはたぶんこれくらいがちょうどいい。

「中学三年の男の子です。そろそろ中間考査の結果出てる頃だから、私も緊張しちゃって」

 そう言いつつ、莉乃ちゃんはのんきに表面のクリームだけをスプーンですくっては口に運んでいる。

「ちゃんと下の珈琲も飲まなきゃダメでしょ。いつまでたっても苦手克服できないよ」
「はあい。なんだか遊馬さんの方が先生みたい」

 くすくすと笑いながら、莉乃ちゃんはおそるおそるカップに口をつける。一口飲み込むと、「にがあー!」と言って顔をしかめた。

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