ひとはだの効能
「ダメだよ。遊馬くんにそんなことさせられない」
「どうして? 俺のことなら気にしないでいいよ。香澄さんになら、むしろ頼られた方が嬉しいし」

 正直言って、香澄さんといるのは俺も居心地がいい。お互い気を遣わず本音で話せるし、俺が飛ばすいささか辛辣なジョークも彼女になら通じる。

 ……それに、身体の相性だって良かった。自惚れているわけじゃないけど、香澄さんだって同じ気持ちのはずだ。

「例え疑似でもさ、恋愛っていつか終わりが来るじゃない? ……そういうのが今は嫌なの」
「……なるほど」

 確かに香澄さんは、結婚まで意識していた相手から手酷い振られ方をしたばかりだ。恋愛に嫌気が差すのもわからなくはない。

「だからさ、友達でいいんじゃない? 私と張り合えるくらい飲める人、遊馬くんくらいしかいないし。こっちにあんまり知り合いもいないから、たまに一緒にご飯食べたり飲みに行ったりしてくれたら嬉しい」
「まあ、いいけど……」

 少しだけ肩透かしを食らった気分だった。しかしそんなのは一瞬で、すぐに冷静になり、恥ずかしさが込み上げて来る。

「ごめん……なんか恥ずいわ、俺。自分一人だけ盛り上がったみたいで」
「そんなことないよ。少なくとも、あの夜の私は遊馬くんにとって悪くなかったってことでしょ?」
「そりゃあ……」

 自分でも、耳まで赤くなっているのがわかる。

 この人、なんてこと訊いてくるんだ!

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