ひとはだの効能
「香澄さん、この後会社戻らなきゃダメ? 予定ないなら、今から飲みに行かない?」

 久しぶりに香澄さんとゆっくり話たいし、花のお礼もしたい。店は十九時までの営業だけど、たまには早くに閉めたって構わない。

「あー、ごめん」

 しかし香澄さんは申し訳なさそうに片目を瞑ると、両手を合わせて謝る仕草をした。

「あ、まだ仕事?」
「いや、今日飲み会なんだ」
「……へえ、友達と?」

 あれ、香澄さんこっちにあんまり知り合いいないって言ってなかったっけ?

「違う違う、歓迎会。九月に同期の子がこっちに異動してきてさ」
「香澄さんの会社ってそんなに頻繁に異動があるとこなの?」

 香澄さんが本社から藤沢に異動になったのは、確か六月だ。
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