ひとはだの効能
「ううん、八月決算で九月異動なのが本当。……私の異動はイレギュラーだったからね。おかげでこっち来た当初は本社で何かやらかしてきたんじゃないかって勘繰られて余計にやりづらかった……ってごめん、愚痴った」

 それって、時期でもないのに元カレ側の誰かがわざわざ手を回して香澄さんだけ異動させたってことか。香澄さんのことが邪魔だからって、いくらなんでもそこまでするか?


「そんな、どんどん愚痴っていいよ。俺たち友達でしょ?」

 誰にも吐き出さずに溜めるだけ溜め込んで、俺の知らないところでまたあの夜のようなことをされたら堪らない。ってちょっと不純な動機から出た言葉でもあったんだけど。

「……ふふ、ありがとう遊馬くん」

 香澄さんはくすぐったそうに小さく笑った。

「うん、やっぱ飲みに行こう。一緒に憂さ晴らししようよ。今週の土曜日はどう? 週末なら香澄さんも次の日のこと考えずに飲めるでしょ」

 一気に畳みかける俺に、香澄さんはちょっと気圧されたように身体を引いた。
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