ひとはだの効能
「……ちょっと香澄さん、誕生日が明日だなんて初耳なんだけど。なんで事前に教えてくれないんだよ」
「え? だから教えたじゃない、今」

 何言ってんの? とでも言いたげに首を傾げる香澄さんに、苛立ちが募る。

 そうと知ってたら、もっといい店を予約したし、プレゼントだって、なんなら花束だって用意したよ!

「前もって教えてくれないとお祝いできないじゃない。俺、プレゼントも何も用意してないよ」
「そんなのいいよー。だってもう三十だよ? お友達と一緒にお誕生日会なんて歳でもないし」
「だから、良くないって!」

 イライラがマックスに達した俺は、香澄さんの肩を掴んでこちらを振り向かせた。香澄さんは驚いて目をまん丸にさせている。 

「良くないよ。俺が香澄さんの誕生日をちゃんと祝いたかったの! だって俺たち……友達、でしょ?」

 至って真剣な俺を見て、香澄さんはなぜかぷっと吹き出した。

「……何笑ってんだよ」
「いやだって、まさか遊馬くんがこんなに友情に熱いタイプだとは」
「悪いけど、俺小中高とサッカー部よ? 思いっきり体育会系だから」
「へえ、意外! いや、わからなくもないか」

 しばらくぶつぶつ言った後、香澄さんはふっと口元を緩めた。

「……十分だよ」
「え?」
「二十代最後の夜を、遊馬くんと一緒にいられるなんて。それだけで、十分」
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