ひとはだの効能
「香澄さん、それってどういう……」
「こんなイケメン拝みながら、二十代最後のお酒飲めるんだもん。神様に感謝しなくっちゃ!」

 ……て、そういうことかよ! いい加減、毎度期待を外される俺の身にもなってくれ。
 そう思いつつも、俺に向かって両手を合わせる香澄さんに笑いがこぼれる。 

「香澄さん、好きなだけ拝ませてあげるし、今日は俺がごちそうするからさ。とことん飲もうよ。日付け跨ぐまで、一緒に飲もう」
「え、でも。遊馬くん明日も仕事……」
「いいから」

 今度は俺の方から、香澄さんの手を取った。

 そうだ、友達だからって遠慮することない。宙ぶらりんの右手が寂しいなら、俺の方から彼女の手を繋げばいいんだ。

「明日のことなら大丈夫。お願いだから、たまには俺の言うこと聞いて。……俺に一番最初に、おめでとう言わせて」
「遊馬くん……」

 街灯の下、香澄さんが満面の笑みを浮かべたのがわかる。

「早く行こう。お店、すぐそこだよ」
「うん!」

 香澄さんと手を繋いではしゃいだ声を上げ、俺たちはオレンジ色のドアを開けた。
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