ひとはだの効能
 酔い覚ましと腹ごなしついでに、ビストロのあった御成町からPregareまで歩くことになった。店に通勤用の自転車を置きっぱなしにしているのだ。

 香澄さんと肩を並べ、国道沿いの道を喋りながらぷらぷら歩く。

「そういえば、遊馬くんってどこに住んでるの?」
「坂の下ってとこ。店からチャリで10分くらい」

 時折海からの風が吹いて、香澄さんの長い髪を揺らす。街灯の下、艶やかに光る髪に触れたくなるのを必死で堪えた。

「ふーん、マンション?」
「いや、一軒家。古くて狭いけど」
「一軒家あ? 若いくせに贅沢だなあ」

 そう言って、心底羨ましそうな声を上げる。

「死んだばーさんの持ち家だったんだ。誰も住む人いなくて荒れてたから、俺が住むことにした。ちょっとした庭もあるよ」
「へえ、ますます羨ましい。庭見るの楽しみ」
「……暗くてなんにも見えないとは思うけどね」

 酔っ払いの足で三十分もしないくらいで着いて、店からは自転車で二人乗りをした。海を真横に、夜道を自転車で突っ走る。

「うわー、楽しい。風が気持ちいい!」

 歩いているときも、自転車の荷台に乗っているときも、香澄さんは終始ご機嫌だった。 
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