ひとはだの効能
 楽しそうな香澄さんを見ていると、俺も嬉しくなる。と同時に、ほんの少し複雑でもあった。

 これから俺の家に行くというのに、香澄さんのこの警戒心のなさはどうだ。一度寝たにもかかわらず、彼女にとって俺はあくまで友達なのだ。きっと危機感なんてまるで感じていない。

 自分から誘っておいてなんだが、あまりの望みの薄さにがっかりする自分もいた。

「あ、コンビニ。寄っていい?」

 交差点で信号待ちをしていたら、香澄さんに肩を叩かれた。

「いいけど。でも、酒もつまみもうちにあるよ」

 香澄さんの誕生日祝いなんだし、気を遣わなくていいのに。俺は善かれと思って言ったのに。

「それもだけど、泊まるとなったら女には色々あるのよ」
「痛て」

 さっきまでしがみつかれていた背中をポコッと叩かれた。
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