ひとはだの効能
 家から一番近いコンビニの前で自転車を駐めた。

「じゃあちょっと見てくるね」

 着いてくるなってことだろう。香澄さんは俺を置いて、買い物かごを手にさっさと店内に入ってしまう。

 鎌倉から由比ガ浜まで歩いたおかげで、すっかり酔いも醒めてしまった。このまま外で待つには少し肌寒い。迷ったが、俺もコンビニに入ることにした。

 怒られた手前、香澄さんがいる日用品売り場付近には近づかないことにして、惣菜やパンの売り場をプラプラと見て歩く。朝食を物色していて、ふとデザートの棚が目に付いた。

 明日が誕生日だって香澄さんが事前に教えてくれてたら、お手製のケーキだって用意できたのに。店ならともかく、普段寝に帰るだけの家じゃ、材料も揃わない。

 どんだけ甘え下手なんだよ、香澄さん。普通、誕生日前日に男と飲みに行くってなったら、それとなくほのめかして、プレゼントなり催促したりするもんだろう。

 でも、そういう妙にさっぱりしたところも香澄さんらしい。

 俺より一つ年上なのに、とその不器用さに半分呆れつつ。それでも、祝ってやりたい気持ちに変わりはなく。

 この中で一番美味そうに見えるケーキを選び、朝食も適当に見繕って、俺はレジに向かった。
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