ひとはだの効能
 二本目のコロナを手渡すと、香澄さんは「ありがとう」と笑顔を作る。

「なに、初恋でも思い出した?」
「そんなんじゃなくて……」

 しかしコロナには口を付けず、そっとテーブルの上に置いた。

「私って、つくづく可愛げがないんだなぁって思ったの」

 そのまま膝に顔を乗せ、ぽつぽつと話し続ける。

 元カレのことだろう。ようやく話してくれる気になったのか。香澄さんの話に付き合うことに決めて、俺も瓶をテーブルに載せた。

「映画の中の女の子みたいに、もっと素直に感情を出していれば、彼も出世に目が眩んで違う人を選んだりしなかったのかな……」
「香澄さんは彼に対してそんなふうじゃなかったの?」

「……そうだね。私には、そんなふうにはできなかった」

 隣をのぞき込むと、香澄さんはまるで悔やんでいるとでも言いたげに、くっと下唇を噛み締めていた。
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