ひとはだの効能
 ほんの数秒、重ねるだけのキスをして、ゆっくりと顔を離す。

 視線がかち合うと、香澄さんは小さく微笑んだ。

「……ありがとう」

 言葉の意味を図りかね、思わず眉根を寄せた。

 照れるでもなく、気まずそうでもなく、どこかスッキリしたようにも見える香澄さんにようやくその言葉の意味を悟った俺は、唇を尖らせる。

「俺ってさ、結構モテるんだ」
「うん、知ってる。Euphoriaにいたときも、遊馬くん目当てに通ってる女の子いっぱいいたもん」
「ここまでしてるのに、……しかも一回寝てるのに、寄っかかってこないの香澄さんが初めてだよ」
「……だって、友達だからね」

「大切だから、一方的に寄りかかって遊馬くんの負担になりたくないんだよ」と笑って、香澄さんは俺の髪に触れた。
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